【トピックス】
12月も半ばにさしかかり、2021年も終わろうとしています。葬儀業界のこの一年を振り返ってみると特に大きな変化はなかったと思いますが、新型コロナウイルスで亡くなったご遺体の取り扱いは昨年に比べれば随分ゆるくなったようです。いずれにせよ、感染しないことが何より大切であり、オミクロン株の状況を注視しながら引き続き感染防止に努めたいと思います。
【お客様からいただく教え】
少し前の話になりますが、11月13日、認知症研究の第一人者である長谷川和夫氏が92歳で亡くなりました。氏は東京慈恵会医科大学、聖マリアンナ医科大学等において認知症を研究し、認知症判定で常用される「長谷川式スケール」を作成しました。また症状の名称を「痴呆」から「認知症」へと改めることに尽力したことでも知られています。近年においては自らの認知症を公表し、認知症患者の立場からの発言で注目を集めました。
近年の著作『ボクはやっと認知症のことがわかった』(KADOKAWA/2019年)を読み、認知症の症状は決して一様ではなく一日の時間帯によっても症状が移り変わること、そして症状にもその人の個性が現れることを知りました。そして、それを心得て対応すれば、認知症の方々との共生は可能であることを教わりました。長谷川氏の実践と功績に心から敬意を表し、哀悼の意を捧げます。
ところで、当社で葬儀をお手伝いさせていただいたご遺族の中にも、故人の認知症をケアされた方は少なくはないと思います。そして、そのご体験の中には、ご苦労と共に貴重な教訓もあったのではないかと想像します。認知症に限らず、ご遺族がふと語られる様々な体験談から、私たちも多くのことを学ばせていただいています。
認知症理解の一助として、有吉佐和子『恍惚の人』(新潮文庫/昭和47年)を読みました。今さら「初読です」とは言い辛いほどの歴史的名作です。舞台は昭和40年代前半の東京都杉並区。認知症を患った舅の介護に長男の嫁である主人公が奮闘するというストーリーです。
実は、この作品の最初と最後に葬儀のシーンが描かれています。臨終、遺体の処置、葬儀の依頼、隣近所の手伝い、お寺さんの手配、自宅での通夜と葬儀、火葬、初七日法要の様子がかなり丁寧に描かれています。この時代における東京の葬儀を知る上で貴重な資料であると思いました。
主人公が最初に電話をかけた葬儀屋の対応には苦笑せずにはいられません。主人公のセリフをそのまま引用します。「葬儀屋に今電話をしたら、今日は土曜日で、明日は日曜だから、明後日の朝にして下さいって言うじゃない? 頭にきたわ。人の死ぬのに土曜とか日曜がありますかって言ってやったら、うちは葬儀屋ですが、こっちは生きてますんでねえって」。
人手不足が慢性化している葬儀業界、近い将来そういうセリフが再現されることになるかもしれません。
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