【公善社情報】
8月29日、セレモール出雲にて、島根人材育成の江角尚子さんを招き、マナー講習会を開催しました(島根県葬祭業協同組合主催)。8月1日に続いて本年二回目となりますが、前回の講習を踏まえた盛沢山の内容で、参加者のレベルアップにお力を貸していただきました。
【映画『君たちはどう生きるか』】
7月に公開された映画『君たちはどう生きるか』(監督・宮崎駿)は、順調な興行成績をあげているようです。名著『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)がどのようなかたちで本作品に影響を与えているのか、この点非常に興味深く、8月にT・ジョイ出雲に足を運びました。以下ネタバレにご注意ください。
幾つかのジブリ作品では少年少女のイニシエーション(通過儀礼)がテーマとなっています。本作も、主人公である小学生・眞人(まひと)が亡き母の実家で経験したイニシエーションを経て、自己成長を遂げる物語です。作品についての解釈はネット上に溢れかえっているので割愛させていただきますが、骨太のメッセージとして「人間の善意への信頼」「生きることに対する肯定」が伝わってくる作品となっています。
そして、吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』は本作において二度登場します。まず、同書は主人公の母親(故人)の蔵書として登場します。眞人は裏表紙に記された自分宛てのメッセージを発見し、涙をこぼしながら『どう生きるか』を読みます。そして、イニシエーションを終えて転居する際、荷物の中に同書を忍ばせます。
吉野の『どう生きるか』は、主人公である中学生コペル君が叔父さんの導きによって、人々の善き行いが世の中をかたち作っていく(べき)という社会観を獲得し、「正しい道」を歩んでゆこうと決意する物語です。青少年に対して「どのように生きるべきか」ということを直接的に問う書物としていまだに大きな影響力を持っており、若き日の宮﨑駿監督も影響を受けたようです。
そして85歳の老境に至った宮﨑監督は、吉野の『君たちはどう生きるか』へのオマージュとして、同書の題名をそのまま冠した映像作品をつくり上げました。本作品の主人公・眞人も、コペル君が到達した境地に至り、新たな覚悟で人生を歩むことになるのでしょう。悪意と善意が拮抗する時代、また新たな命の誕生を手放しで歓迎できない時代において、両作品から発せられるメッセージはとても重要だと思います。
ところで、葬儀という仕事に携わってよかったと思うことの一つは、ご遺族から故人についてのお話をうかがう機会があるということです。そして、無名ではありますが、眞人やコペル君が歩もうとする道を実際に歩まれた方が少なからずいらっしゃることを知ります。葬儀を機縁として、ヒーローではない身近な先人たちの尊敬すべき生き方に触れ、自分の生き方をふと省みる・・・そうした経験が、世の中を少しでも良くすることにつながればいいなと常々思っています。
以上、映画『君たちはどう生きるか』についての感想でした。
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