公善社のブログ

上野千鶴子さんに学ぶ

【トピックス】
原油価格の高騰が、コロナ禍からの経済回復の足枷となっているようです。石油を原料とする商品から農畜産物にいたるまで、原油価格高騰のあおりを受けない商品はないと言っても過言ではありません。原油は産油国によって価格コントロールされており、産油国の意向次第で私たちの生活は大きく左右されます。

原油価格の高騰、COP26での議論、そして新型コロナウイルスの行く末・・・私たちの生活の土台がいかに脆弱なものであるかを否応なしに知らされる昨今です。

【公善社情報】
●11月21日(日)、セレモール斐川とセレモール松江にて人形・盆提灯供養を執り行いました。
●セレモール浜山の祭壇を一新しました。写真は一例です。

 

【上野千鶴子さんに学ぶ】
葬儀業に携わる上で学ぶべきことはたくさんあります。葬儀の川上部分にあたる介護や医療も、その一つです。なぜなら、今後の葬儀の動向は川上部分の変化に大きく左右されるからです。

島田裕巳氏の『無知の死』で紹介されていたこともあり、積ん読となっていた『在宅ひとり死のススメ』(上野千鶴子/2021年/文春新書)を漸く読むことができました。上野千鶴子さんは1948年生まれの72歳。重要なことなので敢えて言いますが、独身であり、お子さんもなく、いわゆる「おひとりさま」です。主としてフェミニズムを研究してきた社会学者であり、社会運動家でもあります。

近年では『おひとりさまの老後』(2007年)『男おひとりさま』(2009年)『おひとりさまの最期』(2015年)を発表し、介護・医療・看取りについて活発に発言しています。本書には、『おひとり様の最期』から6年を経て状況はどのように変わっているのかを確認し、新たな展望を開くという意図があるようです。

自ら「私利私欲のために研究している」と言うとおり、上野さんの課題は明確です。すなわち「おひとりさまである私が、在宅で幸せな高齢期を過ごし、在宅で穏やかに死を迎えるためにはどうすればよいのか?」です。それでは、今日の状況を鑑みて、上野さんは自身の希望は叶えることができるのでしょうか? 本書を読む限り、見通しはかなり明るいようです。認知症になった場合の考察において今一つツメが甘いような気もしますが、介護、医療、年金の各制度が大幅に変わらない限り、上野さんの希望が叶う可能性は高いと思います。

ところで、上野さんは長い間大学教師を勤め、ベストセラーも持っています。それなりの資産と年金があり、幅広い年齢層で頼りになる友人もたくさんいるはずです。それでは、年金の少ない人、資産の少ない人、社会的に孤立している人にも上野さんと同様の明るい見通しが与えられるのでしょうか? この点については少々疑問に思います。上野さんはそうした層にも目配りをしているとは思うのですが、上野プランにおける救いの手はその層にまで及ばないような気がします。

こうした限界を感じつつも、上野さんが新著を出すたびに目を通さずにいられないのは、介護、医療、看取りについて最新の情報を提供してもらえるからです。研究者ですから情報の精度が高く、安心できます。また、実際に現場に足を運んでモノを言う姿勢は信頼できます。そして、自らの希望を叶えるため社会運動に参画していることには敬意を抱きます。葬儀の川上がどのように変化しているのかについて知ろうとするなら、私たちは多くのことを上野千鶴子さんから学ぶことができます。

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